磯村 篤範(島根大学名誉教授)
任命拒否をされた法学系の先生方は、3人とも旧知の方々です。いずれも、研究者として教育者として、心から信頼してきた方々です。
特に専門領域が近い方は、何度か、共同研究をさせていただく機会がありましたが、研究者としてはもちろん、一人の人間としても、高い評価を得ておられました。特に、イデオロギッシュな議論は避けながらも、法的な問題点をしっかりと指摘解明されるところ、そして、異なる意見にも丁寧に議論されるところには、私も多くを学ぶことができました。
今回任命の拒否をされた方々が、学術会議の社会的役割を担う人として信頼できる方であることを、私は自信をもって申し上げることができます。
戦前の日本の政府などが学問の成長を妨げたことを未だ反省しない人が未だいることに、それどころか、学問の妨げを恥もなく行おうとすることには、一人の日本人として、本当に恐怖感を持ってしまいます。
会員任命の資格要件は、唯一「優れた研究業績」という点であり、さらに、1983年の首相(中曽根)の発言では、学術会議会員の首相による任命は「形式的なもの」にすぎないとされていたことからも、現政権の対応がいかに異常かつ不当なものか、憤りを感じます。
石田 徹(島根県立大学総合政策学部)
政治権力が学術・学問のあり方に手出しをするということは、いずれ学術・学問の中身にも手を出してくることに繋がります。
たとえば、「お金の出所」を理由に研究内容まで注文を出すということが、現に「科学研究費」に対してすら生じています。
これらは学術・学問を何か他のものと勘違いしている、理解の無さの表れであると共に、過去の過ちを繰り返すことにほかなりません。
この問題を大きな蟻の一穴としないことが、日本国で基本的人権を享受する者の務めだと考えます。
井上 寛司(島根大学名誉教授:歴史学(日本史))
学術会議のあり方に問題があるかのような意図的な論理のすり替えによって、問題の本質が見えなくされようとしていることに大きな憤りを感じます。将来に禍根を残すことのないよう、改めて大きな声を上げていく必要があると考えます。
農林漁業者がおいしく安全な食料を社会に提供するという社会的使命を果たすために、海・森・里・土・水を大切にするのと同じように、私たち研究者が社会の負託に応え、社会的使命を果たすためには「学問の自由」が不可欠です。
「学問の自由」が失われれば、目先の国策的研究や経済的効率性のみが重視され、中長期的な社会課題に応える学問、普遍的な真理を追求する基礎科学などがないがしろにされ、将来社会の可能性を狭めることにつながりかねません。
佐藤利夫(島根大学名誉教授、地域未来協創本部プロデューサー)
日本学術会議の元連携会員(島根大学の現役教員)