2020年に6名の会員候補者の任命を明確な説明なしに拒否した政府は、日本学術会議を特殊法人化する法案(以下、法案)を今国会に提出しました。この法案は衆議院を通過し、現在、参議院で審議が行われています。
私たち島根大学の現教職員・元教職員有志は、憲法が保障する学問の自由を侵し民主主義を破壊する本法案に反対します。
日本学術会議は、戦前の科学者が戦争に協力したことへの反省の上に、「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って」1949年に結成され(「日本学術会議法」前文)、政府からも「独立して」職務を行うとされています(同法第三条)。
しかし、法案はこの前文の全てと「独立して」の文言を削除する一方、新たに内閣総理大臣が任命する監事と日本学術会議評価委員を新設して、政府が学術会議の運営に介入する道を開いています。さらに、学術会議の公開性を高めるためという説明に反して、役員・会員・職員に守秘義務を課しています(第三十四条)。
政府は、法人化によって学術会議の独立性は高まると説明しています。しかし、自律的な運営が可能になるとうたって強行された「法人化」によって、国立大学は財政基盤が弱体化し大学自治が大きく損なわれてきたことを、私たちは身をもって知っています。
日本学術会議は、政府に対して、時には耳の痛い提言や勧告を行ってきました。このような日本学術会議の自律性を奪い、その役割を変質させようとするのが今回の法案です。現に、日本学術会議がこの法案に対する重大な懸念を表明しており、これを無視して法律を審議していること自体が、この法案の問題点を示しています。
日本学術会議は、これまで三度にわたって戦争・軍事目的の研究は行わないと表明してきましたが、法案の狙いは、このように軍事研究を拒否する日本学術会議を解体することにあると報道されています。島根大学憲章は、「国際社会の平和と発展に貢献」し「学問の自由と人権」を尊重するとうたっており、私たちは、この点からも法案に対して強く反対します。
法案の審議過程では坂井学担当大臣が「特定のイデオロギーや党派的な主張を繰り返す会員は、今度は解任できる」などと答弁したことは、先の6名の会員任命拒否と併せて、日本学術会議の独立性、学問の自由や表現の自由を侵害する法案の危険性を明確に示しています。
学問の自由の侵害が言論の自由や表現の自由の制限とも連動して民主主義を危機に陥しいれ、戦争に至ったということは、戦前の歴史的経験が示しています。私たち島根大学の現教職員・元教職員有志は、この法案の危険性についての認識を市民の皆さんとともに共有し、廃案を強く求めていきます。
*賛同いただける方は下記フォームにご記入ください。
https://forms.gle/it2zv6VNiSBPgdgV7